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「人、いっぱいだね」
メンバーは確か4人だと聞いていた。
けれど楽屋にはざっと数えても20人位はいる。
「地元だしな。だいたいいつもこんくらい居ンよ?」
長型蛍光灯に照らされた
コンクリートと配管が剥き出しの部屋。
長机とパイプ椅子が置かれただけという殺風景な楽屋を、
個性的な服装と装飾を身に纏った若者が彩る様は、
真面目な中学生のかえでには刺激が強すぎて、
西神駅の北口に降り立った時から、
幾度も味わう疎外感が再び頭をもたげてくる。
一朗に勧められるまま
入口近くの椅子に腰を降ろしたかえでは、
二重瞼を縁取る長い睫を瞬かせながら室内を見回した。
一朗・賢二兄弟とかえでの家は隣同士で
幼い頃3人は兄妹のように育った。
ピアノ、スイミング、英会話といった
習い事も同じスクールに通っていて、
3人で切磋琢磨しあった仲だ。
つまり、2歳上の一朗が、
ほどほどに手を抜いていたということに、
かえでは小学校の3年生頃になって
ようやく気が付いたのだけれど。
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