12/26
前へ
/975ページ
次へ
「……イチくん。私って楽屋にまで来てよかったのかな?」 楽屋にいるのは、 化粧をして派手な格好をした 大人っぽい少女ばかりだ。 おそらく自分と賢二だけが 中学生なのだろうけれど、 少なくとも賢二は 黒い細見のスーツを気負いもなく着こなして、 それなりに馴染んでいる。 ――ように見える。 ワックスで固めたヘアスタイルと相まって、 普段よりずっと大人びた雰囲気でもある。 それに比べて私は―― お気に入りのサーモンピンクのシャツワンピースが、 今日は何だか子供っぽく思えて、 真っ黒な直毛もこの中では 妙に浮いているような気がした。 自分だけがこの場に不釣合いで―― 知り合いだという事を、 もしかしたらイチくんは、 友達に知られたくなかったんじゃないかな? なんて卑屈な感情に心が荒みそうになる。 俯いて視線を落としてしまったかえでに、 一朗は首を傾げて逆に問い掛けた。 「なんで?」 なんで……って。 「だって……場違いでしょ?」
/975ページ

最初のコメントを投稿しよう!

100人が本棚に入れています
本棚に追加