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瑛蘭(えいらん)学院大学付属中学校。 先ほどまでは、 有形である全ての進入を阻むかの如く 固く閉ざされていた鋼鉄の門扉が、 終業の時刻と共にそれと分かる制服を きっちりと身に着けた守衛によって、 重低音の雄叫びをあげながら ゆっくりと開け放たれた。 通常であれば部活動や 委員会などで居残る生徒も多く 下校時間は様々だが、 半日授業の土曜日。 しかも定期試験前となればほぼ全ての生徒が、 終業と共に帰路に着く事となる。 二本の門柱の間から、 次々と吐き出されてくる生徒の中に、 かえでの姿があった。 塀際の歩道には、 駅方面へと向かう生徒の流れが 既に出来上がっている。 その流れを辿っていたかえでは 道路の向こう側に、 やたらと目に付く、 かなり場違いな容貌をした、 つまり…… つい最近知り合いになった 人物を見とめて目を瞠った。 照りつける午後の日差しの下で オレンジ色の髪の毛がキラキラと光を弾いている。 思わず立ち止まってしまった体は、 後ろを歩いてくる群れに あっさりと飲み込まれる。
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