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「かえでっ!」 けれど、 自分に気付いたらしい声に呼び止められて、 かえでは再び視線を亮へと戻した。 同時に向けられる2人組みの じろじろと舐めるような、 いかにも値踏みしています といった視線がいたたまれない。 会釈はしたものの、 かえではどうして良いか分からず 立ち止まったまま動けなかった。 亮の元へ行くべきなのか? けれども、 たまたま自分に気付いて 声を掛けただけかもしれないのに、 そこまでするのはヘンだろうか? そんな想いの狭間で逡巡する時間は 長くは続かなかった。 どうやら彼の方から こちらへ来てくれるつもりらしく、 亮は2人に何か言い置いて、 おざなりに安全確認を済ませると、 そのまま車道を横切ってくる。 「なぁにシカトしてんだよ」 亮は傍らまで来ると開口一番にそう言った。 バグズ・レコードで話をした時同様に、 彼の口から出る乱暴な言葉は、 その言葉ほど相手を責める為に 使われているわけではないようだ。 その証拠に見つめる視線がとても柔らかい。
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