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飲食店などの入った
細長いビルがひしめき合う界隈を北上して、
大路を逸れると風俗店がずらりと軒を連ね、
反対側には地元民に駅北ロードと称されるホテル街がある。
2人の目的地は飲食店街中程の路地裏。
古い雑居ビルの地下にある【ガード下】という、
キャパシティー100名足らずのライブハウスだ。
ちなみに、ガード下にあるわけでもないのに、
なぜガード下という名前なのか……
気になったかえでだけれど、
賢二に訊いてみたところ
『知ンね』と一蹴されてしまったので、
その疑問は未だ彼女の胸に残ったままだ。
踏み潰されたタバコの吸い殻が転がる階段は、
急なうえに手すりもない。
薄暗い階下を見下ろして、
かえでの膨れ上がっていた気持ちが、
しわしわと萎んでいく。
場違いだという事は充分承知していたけれど、
さすがに現実を目の当たりにすると、
否応無く気後れしてしまう。
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