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「そっか、
イチくんに訊けば良かったんだ」
その言葉に亮がくつくつと笑い、
一朗は額に手を当ててため息を零した。
「かえでは肝心のトコがヌケてんだよなあ?」
お勉強は得意なのにな?
と、続くのは一朗の口癖のようなものだ。
馴れきった揶揄に頬を膨らませると、
亮が意外そうに眉を上げて「ふぅん」と呟いた。
何が『ふぅん』なのだろう?
一朗とかえでの視線が亮へと向う。
亮はグラスに口を付けたまま「ん?」と目を上げて、
意味あり気に笑った後、一気に水を飲み干した。
「なんだよ? リョー」
「べつに?」
「何だよ別にってー」
「何でもねーって」
「いんや。絶対なんかあるね。言えよ」
「ねえよ。あっ、すんません。お代わり下さい」
亮は料理を運んできた店員にグラスを上げて水の催促をすると、
グラスを箸に持ち替えて豚のショウガ焼きを頬張る。
どうやら一朗の言葉は無視する事にしたらしい。
一朗もそれ以上追究する気は無いらしく、
結局『ふぅん』の真意は分からずじまい。
かえでにしてみれば『なるほど』に続いて
ふたつ目の疑問が残ったのだった。
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