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つられてかえでもその視線を辿ると、 先は角になっていて姿は見えないが、 そちら側から人の話し声が聞こえてくる。 コンクリートの狭い通路に反響する声は―― 「イチくん?」 「たぶんね。向こうに裏口があんだよ」 聞き覚えのあるその声にかえでが頬を緩めると、 間を置かず、 ビニールのレジ袋を提げた賢二の兄の一朗が 突き当りの角を曲がってきた。 その隣りには 目に眩い黄緑色のジャージを着た茶髪の少年もいる。 バンドのメンバーかな? などと思いながら目を向けていると、 「かえで!!」 すぐさま2人に気付いた一朗が、 弟のそれとよく似た切れ長の眦を下げて駆け寄ってきた。 「マジで来たんだ~? よく来れたねェ」 長身の一朗は腰を屈めてかえでに目線を合わせ、 小さな子供にするように頭を撫でてくる。 むず痒いようなくすぐったさに瞳を細めながらも、 かえでは眼前の見慣れない姿を指摘した。
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