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「うん。イチくん頭スゴイ」
もともと明るい茶色だった一朗の髪が、
今夜は蛍光灯の光を受けて黄金色に輝いていた。
その髪を剣山のように逆立てている為、
細い眉毛が露になって人相まで違っている。
「かっこい?」
こんな一郎の姿を見るのは初めてで、
格好良いなどという感情は、
驚きの方が勝ってしまって湧いてこない。
「なはぁ~んで即答しねんだよぉ。このやろ~」
「だって……あっ」
からかうように言いながら伸びてきた長い腕が、
かえでの細い首にヘッドロックをかける。
「ま、待ってイチくん!」
「や・だ」
もちろん本気ではない力加減だが抵抗は叶わず、
かえではそのまま楽屋の中へと引きずりこまれていった。
楽屋に連れ込まれたかえでは、
その中の予想以上の賑わいに目を丸くした。
熱気と汗と、フレグランスの入り混じった匂いに
むせ返りそうになる。
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