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ジリリリリリン!
昨日、そして一昨日と同じ時間。
この一呼吸置いてから受話器を取る仕種も、いつも通り。
私は少し間を置いて、声を発した。
「…………はい」
『…………』
私はついに我慢の限界を迎えた。
「いい加減にして! いつもいつも何なんですかアナタ!?」
『…………』
「何か言ったらどうなの!? アナタ一体誰なんですか!?」
我を忘れ、顔の見えない相手に向かって叫んでいると、
「どうしたんだ。大声上げて」
隣の部屋から定夫さんが顔を覗かせた。
……そうだ。今日は定夫さん、お休みだった。やだ、はしたない声聞かれちゃった。
私は頬を赤らめ誤魔化すように定雄さんに受話器を差し出した。
「あ、定夫さん。また例の無言電話なの。貴方からも何か言って頂戴」
定夫さんは「よし」と頷くと受話器を受け取り、スウッと息を吸い込んで言葉と共に吐き出した。
「おいお前! お前みたいな悪質な輩は即刻失せろ!」
物おじしないでハッキリと言う定夫さん。素敵。
「もう二度と掛けてくるな! 消えろ!」
定夫さんはまるで通話相手を捩じ伏せるように受話器を乱暴に置いた。
「ありがとう。スッキリしたわ」
「もしまた掛かってきたらさすがに警察を呼んだ方がいい。キミにもしもの事があってからじゃ遅いからな」
警察か……。ご近所さんの目もあるし、あまり大事にはしたくないな……。
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