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今日は二人で、スーパーへ買い物に行った。
そこで小さいタマネギのようなものを見付けた。
「なにこれー?」
形はタマネギなのに、一口で食べられるくらいに小さい。
「ね、ね、見てこれ、可愛くない?」
「はあ?」
「えーと、ペコロスだって。名前も可愛いね?」
「可愛くねーよ。『コロス』って入ってんじゃねーか。ペッ殺すぞコノヤロー」
「アハハハハハハハハハハ」
「お、おい」
突然大笑いしだした私に、彼は驚いたようだ。
なぜこんなに笑うのか自分でも分からなかった。
今までの不満が笑いに転化して吐き出されて行くようで、どれだけ笑っても収まる事はなかった。
「アハハハハアハハアハハハハ」
「他の人に迷惑だろ。ペッコロ…あ、プッコロ…あれ?おい、やめろって」
「アハハハハアハハハハハハハハアハ…」
彼は顔を真っ赤にしながら、怪訝そうに振り向く買い物客達にペコペコと頭を下げていた。
何かすべてが吹っ切れて、私の中で答えが決まった。
あれからどれだけ経ったろう。
あの時の事は今でも思い出して笑ってしまう。
花屋でデンファレを買い、店員さんに花束にして貰う。
「ありがとう」
振り向いて、彼にお礼を言う。
「ありがとうじゃねーよ。早く受け取れよ。ぶっ殺すぞコノヤロー」
「分かってるよ。ペッコロスぞこのやろー」
あれからは「ぶっ殺す」と言われたら「ペッコロス」と返す事にしている。
笑う彼と私。
目を丸くして口をあんぐり店員さん。
花束を左手に、彼の手を右手に、デンファレの香りに包まれながら、二人でいつもの道を、これからも。
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