保健室

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最近の楽しみと言えば、これ。 僕の目の前にいる、この真面目そうな黒髪の女の子、名前は山下夕さん。 彼女は今、おでこから少しだけ出血をしたようで、それにしては冷静な顔立ちでこの保健室に入ってきた。 「いつから痛いの?」 「朝からです。」 「ぶつけたの?」 「こけてしまって。」 「そういう風に見えないのにね。」 「初めてです。」 彼女は最近、眼鏡とコンタクトを併用するようになってからというもの、学校前の坂で良く転ぶとの事で。 そこまでしてまで、彼女が自分の見た目を気にするわけとは、そんな事は一つしかない。 彼女には、心に想う人が出来たのだ。そして、彼女は自分の傍に、その存在を留めておける権利を手に入れたのだ。 それは相手もしかりで、彼女は彼の想い人となり、彼女の存在は彼にとってもとても大切な存在になったのだ。 漫画か。これはあれか、きらきらした日常が描かれる大人気漫画のワンシーンなのか。 そんな事を心の中でぐるぐる巡らせながら、彼女の怪我の様子を診ながら、少し気分の落ち込んでいる様子の彼女の声に耳を傾けていた。
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