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「何か悩み事でもあるのかな?」
「えっと…」
「無理に話さなくていいよ。話したくなったらいいし。」
「でも…」
「でも?」
「あんまりこういう経験ないので。」
彼女が初めてこの保健室に来た時の事は良く覚えている。
最初はそう…いや、この話はまたの機会にしよう。今はこの、おでこの少し腫れたこの愛らしい女の子の悩みを聴くことに集中しましょうか。
「何かされたの?」
「ちょっと、トラブルのような、困難のような…」
「同じだね、意味。」
「あ、そうですねそうだ…」
「悩み相談できる人とかいないなら、僕相談乗るからさ。」
「先生には、あまり迷惑をかけたくないので。」
こういう控えめな子に惹かれる男子はたくさん世の中にいるのでしょう。
しかし、この可憐な女の子の心を射止めたのは、まさかの相手だったのだ。
それは職員室でも少しだけ話題になった、金髪で秀才の以外にも丁寧な態度をする一人の男子生徒、名前は宮下優さん。
金髪の男子生徒と黒髪の女子生徒が付き合っている。
何の共通点もなさそうな彼らの行動を、僕は密かに注目していたのだ。
「これが仕事だからね。できればその迷惑を、僕にかけてほしいんだけどな。」
「なんか先生…」
「今のはなんか駄目だったね。なんかごめんめ。」
「別に、優さんも結構…あ。」
彼女は自分の彼氏の事を優さんと呼び、優さんは彼女の事を夕と呼ぶ。
この奇妙な呼び合いをたまたま見てしまった僕は、彼らの関係性を少しずつ知っていくようになった。
二人は僕に比較的友好的に接してくれるので、僕もそれに応えていきたいと思っている。
「あ、例の想い人だね。最近どうなの?」
「最近はその…喧嘩中で…」
「あらら。何かあったのかな?」
「その、私優さ…あ、宮下さんの友達で森川君っているんですけど、その人すごく優しくて、すごく頭良くて、すごく…」
「それさ、宮下にそういう感じで話してるのかな?」
ここで登場する森川君は、宮下さんと言いなおされてしまった哀しき彼氏である男子生徒の友達で、比較的話しやすい好青年である。見た目はそれなりに派手だが、比較的面倒見の良い性格だという事は日頃の態度で伝わってくる。五人兄弟の一番上だと確か言っていた。
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