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妙に芝居がかった口上で開かれたドアの向こうには、愛しの旦那様の姿があった。
久しぶりに目にする白衣姿に、胸がキュンと鳴る。
しかし独身アラフォー高田女史の手前、抱きつくわけにもいかない。
衝動を懸命に抑え、ヨウムの件をよしなにお願いしてから、私達は准教授室を後にした。
「……ふふっ。びっくりしたよ」
歩き始めてしばらくすると、碧さんが小さな笑いを漏らした。
「内線で、『氷室花純が怪我して、患畜として運ばれてきた!』なんて言うから、高田准教授」
「患畜なんて、ひどい!
そんな事言われたんだ、碧さん。
もしかして信じたの?」
「まさか。
『僕の妻の翼膜でも破れましたか? それとも尾椎が折れましたか?』って訊き返したよ」
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