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これだ。この行動力。
PSPに頭が切り替わり、集中し出すとこうなる。
彼女から遅れること5分、俺も現場に到着する。
開かれたドア、周りに転がる機動隊、それを囲うようにバスが数台。
目にした瞬間、緊急事態を理解し、逸早く最善策を組み立てて実行に移せるのが彼女の強みであり俺の頭の痛いところだ。
そして、彼女の行動に迷いがない理由を知る。
『着地成功。ん?着飛行機成功。南くーん、降りといでー。』
降下開始発言後、僅か5秒で成功報告。
その間、成の笑いは止まることを知らないのでスルー。
南が降下したのを確認すると、上空のヘリは一旦引き上げさせる。
「成。フォローに回れ。」
『ラジャ。内部設計図送ります。心。足音要注意。』
『ラジャ。…ところで隊長。暗殺専門の部下とか気付いてるわけ?』
「心!集中しろ!それは後でもいいだろ!」
『はーい。…尾翼到達。貨物室開けるよ。南くん、そこをゆっくり回して。音立てないようにね。』
『ラジャ。』
こんな緊急事態にも関わらず、頭に幾通りもの思考回路が彼女にはあるのだ。
腹心の部下の存在、どうやって誘きだすか、どうやって逮捕するか。
同時に南に指示を与え、A班ギリギリの行動を見極め、俺たち本隊の潜入のベストタイミングを謀り、人質を守りつつ、犯人を逮捕するまでの道筋。
『…潜入成功。スコープカメラ装着…完了。成。準備いいかな?』
『どうぞ。』
犯人の人数、待機場所、見張り、人相や武器、心が事細かに伝えると、それを本部の成が飛行機の模型図に書き込み、リアルタイムで俺の携帯端末に送られてくる。
「…大崎、ラジャ。…A班、そこからCA待機場所下まで移動して待機せよ。
大崎班、行くぞ。バスに身を隠しながら尾翼方向から近付く。」
『それで失敗した機動隊がそこらに転がっているのでは?…隊長。それはダメですよ。絶対失敗する。』
「それ以外に近付く場所が」
『あるんだなー。これが。』
…この頭の回転の早さ。
たまに俺は凹んだりする。クソ。
『聞いてくださいます?』
「早く言え!」
『じゃ、遠慮なく。』
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