治まらない動悸

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その思考を少しでも止めたい。 だから俺は彼女を外へ出し、陸や成に時間を与える。 少しでも追い付けるように。 一瞬でも緊急指令だけに集中してもらうため。 『28Aに座ってる男が怪しい。恐らくそいつが航空警察だ。行動起こされる前にケリをつける。 現在、A班は命令通りCA待機場所下の貨物室にて待機中。 大崎班はヘリにて降下、飛行機の天井に待機してもらい、隊長は正面から入ってもらう。 この飛行機、確かコックピットの窓が開く。』 「…挟み撃ちか。」 『手っ取り早くていいでしょ?』 「ああ。タイミングを見計らって隊員を入れる。俺が囮になる。」 『私が。』 「ダメだ。」 『隊長。正面から入るなら、前方を向いてる乗員乗客全員の顔を確認できるのは隊長ですよ。 分かってるでしょ?乗客のふりして犯人が混じっていると想定するなら、後方にいる私は分が悪い。』 「…………ダメだ。」 『……蒼依。乗客が殺されちゃう。』 「……………」 『蒼依。』 そして結局、彼女の考えに誤りもミスもない的確なものであり、それが最善策だと思い知らされるのだ。 「…こちら大崎。大崎班、ヘリより上空へ回れ。飛行機天井にて待機せよ。 成。コックピットに繋げるか。」 『緊急回線を開きました。……どうぞ。』 「…こんにちは、機長。私はPSPの大崎と申します。声を出さず、動揺せず聞いてください。 これより救出作戦を決行します。私はそのコックピットの窓から侵入したいと思います。 今すぐ窓を開けていただけますか?」 話し掛けながら上空へ移動。 A班と同じく、100mで待機。 そして、ゆっくりと窓が開くのを確認。 「ご協力感謝致します。これより10秒後、コックピット内に入りますので声を立てないように。 大崎班!全員1分以内に天井に着いておけ! A班!作戦を決行する!機内に上がれ!」 指示を出し終えるのに5秒。 その後、ヘリから跳び一気に降下し、残り20mほどになったとき身体をしならせる。 5mほど進んでロープを手離すのと同時に命綱のリングを解除して、完全に空中へ身体を投げ出す。 身体をしならせた反動が振り子のように俺を窓へと導く。 ヘリから降下し、コックピット潜入まで5秒。
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