治まらない動悸

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「…………」 しかし、心はなぜ今ごろになって急に口出しし始めたのだろうか?と考えてしまう。 何か特別な切っ掛けがあったからでは? その切っ掛けって何だ? 皆川が死んで少なくなった夫婦の駆け引き。 それを今また繰り返そうとしているのは彼女の方だ。 一歩遅れれば命取りになる。 (…ここは押してみるべきだな) ヤレヤレ…と腰を上げ、自室に向かう。 「心ーー?いるか?」 「あーーー!!こっちに来ちゃダメじゃん!報告書はどうしたんだよーー!!」 「……へ。」 「でてけーー!!」 …何でだよ。おい。俺、旦那だぞ。 ここは俺とお前の部屋だろうが。 「心。何して」 「浮気中!不倫中!だから出てけ!」 「……はぁ!?」 「ギャハハハハ!!最高!心!」 「……………」 バカ笑いする約一名はスルー。 聞き捨てならないことを耳にし、無いと分かっていながらも心が逸る。 声のするキッチンに向かうと、気配を感じヒョイと避ける。 「ワハハ!お前旦那に跳び蹴りって!アハハ!」 「避けるなコラーー!」 「避けないでか!!………あ。」 「あーー!見られた!成、失敗!」 「いいよ。どうせこいつにとってはヤバいくらい嬉……ワハハハハ!!お前!顔真っ赤!!」 そこで目にしたものは、"happybirthday蒼依"と書かれたケーキだった。 …そうだ。今日は俺の誕生日。 皆川やハワードとの決着が済むまで集中しようと約束して、それが解禁になった初めての…… さっきまで、いろいろと考えてたものが一気に吹き飛んだ。
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