治まらない動悸

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「分かった!分かったよ!言う!!」 「……………」 どんどん涙目になってきた彼女は、観念したように吐き捨てた。 それを聞いて彼女を解放する。 「……こちら大崎。2主任、中に入れ。」 無線を繋ぎ一言呟けば、また悔しそうな表情。 その腕を引きリビングにいくと、ちょうど陸と成が入ってきた。 定位置に腰を据えると、彼女は窓枠に身を預け腕を組んで外を眺めながら話し始めた。 「…私が存在に気付いたのは、皆川がミスをしたお陰…かな。」 「皆川がミス?…心。それはいつのこと?」 「…PSPが皆川のアジトに奇襲を仕掛けるちょっと前。」 「ミスってどんなこと?」 「今まで完璧だった壁が崩れた。」 「壁?……通信か!」 「当たり。皆川捜索の手懸かりのために張っていた通信関連の網に引っ掛かった。…それも電話。」 「電話!?…有り得ない!」 「ちょ!!成!お前らだけで話進めるな!どういうことだ?俺らにも分かるように説明しろよ!」 「…ん?…ああ。 皆川は、その存在を知る者は多いが、情報を手に入れることが出来ないほどの人物だったのは覚えてるだろ? 長官がlevel6を開いても期待するなと言った理由はそこにある。 地球を丸ごと知ることの出来るlevel6アクセス権でも皆川は分からなかったんだ。 でも心は長官時代、そうと知ってて網を仕掛けることを怠らなかった。」 「…ああ。そこまでは分かる。」 「…情報収集初歩中の初歩は、メール、電話などの仲間と通信する手段の傍受。 皆川は、そんな単純な網に引っ掛かったってことだ。 ……ま、心の場合、それが妙に思ったってことだ。」 「その通り。裏があるんじゃないかと。」 「…して、その内容は?」 「…一言だけ。……"お疲れさまでした。G9"」 「……G9?」 「…恐らくそいつが殺し屋だと思う。」 そして、皆川と戦ってたときによく見た表情。 殺気を放ってるわけではない。が、異様なオーラを身に纏い、それが渦巻いているような。 俺は一言も発することなく、すべてを成と陸に任せ、ジッと聞くことと考えることに集中した。
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