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「トノ、あの、さ……」
おーちゃんが好きだと確信して数日後、寮への帰り道にトノに話をした。
「なーにー?」
俺の顔を覗き込むように見上げてくるその横で、俺はゆっくりと息を吐き出した。
「俺ね、…気になる人、いるんだ。」
「おー!?誰?俺知ってる?」
驚いたように、でも興味津々なトノに少し心が軽くなる。
トノには偏見なんてものはないのはわかってるんだ。
だけど、少し怖い。
少し、不安。
だから顔を見ることは出来なくて、不意に視線を逸らしてしまった。。
「……あの、せんせ……なんだけど」
「白衣の?」
うん、と頷けば「そっかぁー!」って。
思わずトノへ振り向けば目が合って首を傾げられてしまった。
「相手が男って…おかしいと、思うか?」
「ヒメが男の人好きなのはビックリしたけど、おかしいとは思わないよ?」
当たり前でしょうという顔で言われて、俺も漸く力が抜けた。
よかった。俺の親友がトノでよかった。
何でもないように受け止めてくれるトノが有り難くて、胸が熱くなる。
「ありがとう」
その一言を伝えるだけで精一杯だった。
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