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どうしても名残惜しくて、目で追ってしまう。
先輩が行き着いた先はマネージャーと思われる男の人の側だった。
可愛い、な。あの人。
仲、良さそうだな。
あ………
気付いてしまった。距離の近さ。
腕に触れている。身体に、触れている。
近い。触るな。やめ、ろ……!
不意に目が合ったそのマネージャー。
ジッと見つめられて、俺は動くことも目を逸らすこともできなくて、そのまま固まってしまった。
「ヒメ…?」
トノに呼ばれても上の空で…
どれくらいそうしていたのか。
もしかしたら一瞬の事かもしれない。
でも凄く長く感じた時間だった。
フッと逸らされた視線の先を辿れば、俺の好きな人が居て。
目で追えば、自分に向けられた事のない顔がそこにはあった。
「帰ろっか」
トノにかけた声は震えてはいなかっただろうか。
ゆっくりと微笑みトノへ顔を向けた。
行こう?と促して歩き始める。
何も聞かないでいてくれる事がありがたかった。トノでよかったと思った。
いや、トノじゃなきゃバレないんだろうけど…
なんで俺ってこんなに察しがいいのかなぁ。
もっと鈍感だったらよかった。
そしたらまだ知らないでいれたのに。
──────先輩、恋人いたんだね。
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