序章 終わり

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 その景色を疑い、何度か瞬きをしてからぎゅっと力強く瞼を瞑る。しかし目を開けた先には、業火に焼かれ、黒煙が蒼穹を裂き、一部崩れ瓦礫となった村があった。  やはり信じられない。かつて住んでいた村が、もう、見る影もないなんて。村に住んでいた顔見知りも、無残に人生の幕を閉じていた。首が体から離れたり、腰から真っ二つにされたり、村と同様に、原型を留めていなかった。  さっきまで森にいた。村から灰の混じった淀んだ煙がもうもうと上るのが木々の隙間から見えた。見えて、走った。急いで走ってきたからか、息は荒く落ち着かず、心臓の鼓動はどくどくと早く高まり、体が仄かに震える。  ふと、視線が傾いた。さっきまで動いていはたずの肉片が視界に入り、急激な吐き気に襲われ、両膝を地に付き思わず嘔吐する。
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