標的2 笹川京子

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それから、4時間目に入る頃には授業に飽きてしまって、弥王は教室を出ていた。 それにしても、日本(ジャッポーネ)の授業のカリキュラムはつまらない。 全て、弥王がイタリアで修めていた内容だ。ただ唯一、家庭科は面白かったが。 そんなワケで、別に授業受けなくても良いかぁー。と投げやりに思って、屋上に向かっていた。 何故かって、答えは簡単。唯単にバレにくいからである。 廊下を徘徊するより、屋上で時間を潰した方が良い。 屋上に出る重たい扉を開くと、緩やかな風が弥王を包むかのように吹き抜けていく。 屋上に出れば、午後に差し掛かろうとする太陽が強く弥王を照らして、眩しさに弥王は目を細めた。 今まで窮屈に椅子に押し込められていた体を伸ばせば、窮屈さから解放されたように全身の力が抜けていく。 新鮮な空気を肺に一杯溜めると、吐きだした。 雲もなく、青い空だけの快晴だ。暖かさに弥王は徐に目を閉じた。 「♪旅の始まりはもう思い出せない 気付いたら此処に在(イ)た 季節が破れて未発見赤外線 感じる目が迷子になる」 弥王は歌い出した。 たまにこうして歌っていないと、いざと言う時にその能力が役に立たなくなるからだ。 まぁ、能力以前に弥王は、元々歌う事は好きだった。 気が付けば、1人の時は大抵、何処でも歌っている。別に聴かれようが知ったこっちゃあないと言うかのように。
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