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弥王は彼女を怖がらせないように努めて優しく、彼女の顔にタオルを当てて、顔に付いた汚れを拭いた。
持ってきていた鞄からもう一枚タオルを取り出して、今度は髪に付いた卵を拭っていく。
タオルの柔らかさで落ち着いたのか、さっきよりは怯えたような顔をしていないことに弥王は安堵した。
「あの・・・・・・」
恐る恐る彼女は弥王を見上げてくる。見上げてきた黄金色の大きな瞳と目が合う。
弥王は悲しげな顔で呟いた。
「辛かったな・・・・・・」
「え・・・・・・?」
弥王が呟いた言葉に彼女はキョトン・・・・・・と目を見開いた。
まさか、そんな言葉を掛けられるとは思ってもいなかったのだろう。
それもそうか。彼女は今まで、クラスメイトから暴行を受けていたのだから。
むしろ、自分に危害を加えない人間が居るなんて思っていないのだろう。
弥王は鞄から制服の替えを取り出すと、それを彼女に手渡した。
「いつまでも汚れた制服じゃあ気持ち悪いだろ?
服を貸してやるから、着替えた方が良い」
「え・・・・・・あの、でも・・・・・・」
その制服は、今日は午後の授業に体育があった為、持ってきていた物だ。
それが解ったのか、彼女は制服を持ったまま、あたふたと戸惑う。
弥王は後ろを向くと、そんな彼女に言った。
「大丈夫だ、どうせ、午後の授業はサボる気だし。
それに、制服の1着や2着、ボロボロになった所でまた買い直せば良いだけだ」
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