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「気にせずに着替えなよ」と、弥王は言うと、空を見上げた。
天気が良くて眠たくなる目を擦って、午後の空をボーッと眺める。
暫く空を眺めていると、不意に声が聞こえた。
「あの・・・・・・っ」
声が聞こえて、もう着替えたのだろうと思った弥王は彼女の方を振り向く。
すると、ぶかぶかの制服の袖や裾を折って着こなしている天使がそこに居た。
弥王よりも小さなその体に彼の制服は大きすぎたようだ。
それでも着こなしている彼女に弥王は流石女子は凄い、と思った。
「自己紹介がまだだったな。
オレは神南弥王。
今日、転入してきたんだ」
屋上の固いコンクリートに座って、弥王は話を切り出した。
天使も彼の隣に座り込み、弥王を見た。
「あ・・・・・・わ、私、笹川京子です・・・・・・」
「へぇ、「京子」かぁ。
良い名前だな」
「あ・・・・・・ありが・・・・・・」
笹川京子、と、弥王の頭はコンマ以下で天使の名前をインプットした。
京子の名前を褒めると、京子は顔を赤くさせてお礼を言おうとしたが、それは空腹を告げるお腹の音に掻き消された。
その所為か、更に京子は顔を赤くさせて、俯く。
え・・・・・・何、この可愛い生き物、と弥王は京子を見ながら思った。
ふわふわしたブロンドの髪と黄金色の大きな目がとても印象的で、笑うととても可愛いんだろうな、と弥王は思った。
「弁当は?
つか、鞄は教室か。」
京子が鞄を持っていないのを見て、弥王は何となく想像が付いた。
それと同時に京子は首を弱々しく振った。
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