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今までの鬱憤晴らしだというように、木吉は京子を捲し立て、怒鳴る。
勿論、京子に目立っている意識はない。
京子は意味が解らないと言う様に首を振った。
「私は別に、そんなつもりじゃ・・・・・・」
混乱する頭で紡がれた言葉は、狂気を滲ませて不気味に笑う木吉に強制的に中断させられた。
顔を歪めて笑っている木吉に嫌な予感がして、京子は一歩一歩、後ずさる。
「標的はあんた・・・・・・あたしの為の踏み台になる事を誇りに思いなさい」
狂気の滲む笑顔をした後、スカートのポケットからカッターナイフを取り出して、刃を出す。
午後の太陽の光を反射して、カッターはその銀色の刃に京子の姿を映した。
京子は何をされるか解らない恐怖に戦慄し、その場から動けなくなる。
まるで、背骨の代わりにドライアイスの塊を突っ込まれたかの様な嫌な汗が額から頬に伝う。
そこから、京子は何が起きたのか、理解できなかった。
ただ、いきなり木吉がカッターを思いっきり振り下ろしたかと思うと、自分の肩にカッターを突き刺したのだ。
コンクリートに金属が投げられて落ちる音が聞こえて、カッターは京子の足下に落ちた。木吉が投げたのだ。
その木吉は肩を押さえて、フェンスに背中を預け、蹲る。
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