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「ご主人様ぁぁぁああ!!」
朝から馬鹿でかい声を張り上げ、黒髪に黒縁眼鏡の男性が弥王に近付く。
弥王は馴れているのか耳を塞ぐことはなかった。
いや、むしろ、「うるっせぇ!」と言いながら、男性に回し蹴りを食らわせた。
長い足は綺麗な半孤を描いて、男性の丁度腹にクリーンヒットする。
男性の呻き声など気にも留めずに、弥王は鞄の準備に勤しんだ。
男性はめげることなく立ち上がると、弥王に声を掛けた。
「ご主人様!!
ご登校されるなら、この私が・・・・・・」
「だが断る」
「ご主人様ぁぁぁぁああ!?」
「っるっせぇ!!」
「ご登校されるなら、この私がお送り致します!」という男性の申し出が解ったらしい弥王は、男性の言葉を冷静に遮った。
すると、遮られた本人は遮られるなんて、しかも断られるなんて夢にも思っていなかったのか、断られて絶望したとでも言いたげに声を上げて、弥王に今度は膝を入れられた。
その一部始終を呆れた様な顔で砕かれたクッキーを食べながら、ララァは見ていた。
そんな不憫な扱いを受けたのは、メテーオラ。
黒髪に黒縁眼鏡が特徴の弥王の執事だ。
弥王曰く、ダメダメ執事とのこと。
メテーオラへの制裁が終わり、鞄の準備が出来ると、丁度餌を食べ終わって満足そうな顔のララァに手を差し出した。
「行くぞ、ララァ」
「なーん」
哀れなメタ―オラを一瞥して、ララァは嬉しそうな声と共に弥王の手を伝って肩に乗った。
それを確認すると、弥王は食堂を出て、エントランスの右にある扉から、外に出た。
直射日光が目に染みて、思わず弥王は目を細める。
10月だと言うのに、まだ夏の暑さが尾を引いている為、秋らしく温かい気温とは言い難い。
それにうんざりしながら、弥王は街に続く小道を歩いて行った。
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