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男子の口ぶりから、その天使が「笹川さん」で間違いないようだ。
そして、男子は何処から持ってきていたのか、卵を取り出すと、「笹川さん」に投げる。
だが、それは「笹川さん」に当たることはなかった。
生徒達は、一瞬のことで何が起きたか解らず、呆然と目を見開いた。
ただ1人、この状況を作り出した張本人は曲げていた体を伸ばすと、困惑したような顔で卵を投げつけていた男子を見やる。
「まぁ、待てよ、お前ら。
何で、この子を虐めてんだ?
状況が解らない、誰か説明してくんない?」
そう、弥王であった。
弥王は、「笹川さん」が卵を投げられた時、咄嗟に彼女の前に躍り出て、投げられた卵を全て受け取っていたのだ。
弥王としては状況が解らないのに、いきなり目の前で虐めが起こって、それを見過ごせなかったと言うわけだ。
弥王の言葉にぽかーんと口を開けて間抜け面を披露している生徒の顔が、弥王にはとても滑稽に見えた。
「あ・・・・・・えと・・・・・・ね、神南君」
間抜け面を浮かべた生徒の中から、不意に声が上がった。
その声の元を辿れば、そこには重力を無視したそれはそれは何という素晴らしいサイヤ人の様な髪型をした男子生徒が居た。
あぁ、彼は確か。
弥王は、その顔から脳内のデータベースを開く。
“沢田ツナヨシ”だ。
沢田ツナヨシ――――否、沢田綱吉は、弥王の前に1人の女子生徒を立たせると、説明し始めた。
さっきの女子は、彼女――――木吉レーナを虐めている奴なのだと。
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