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キラワレールのせいで自分を追い詰めてしまい、ヤケ酒という荒療治に手を出してしまった夕梨。
そのことに関しては、後日彼女ときっちりと話し合うとして……。まぁ、何にせよ、元を辿れば悪いのはやはりキラワレールだ。
あの薬のせいで、俺達は皆、良くない夢を見てしまっていたということにしておこう。
そして、夢はいつか醒めるもの。
そろそろ夕梨も悪夢から解放してあげなければ。
「だ、だだ、だから、その、か、彼女として、駆の期待には最大限応えられるよう、努力していくつもりだけど、私、そういう知識には疎いから、もう少し勉強する時間をですね……」
「――夕梨」
尚も赤面しながら必死に抵抗している彼女の声を遮って、俺は更に顔を接近させる。
イケメンボイスで名前を呼ぶことも忘れない。イメージは諏訪部ボイスだ。
「焦らされるのは嫌いじゃないが、もう我慢できないと言ったはずだぜ? さぁ、早く。ハリーアップ。今すぐ俺を痛めつけてくれ。思いっきり蔑んでくれ。受け入れの準備はいつでもOKだ」
「ひゃ!だ、だから、そんなこと出来な……」
「出来る出来ないじゃない。やるんだ。やる前からできないなんてのは甘えだ。大丈夫。夕梨ならできる。さぁ、勇気を出して」
「で、でも、そんな、それって、私、」
「考えるな、感じるんだ。こうなった以上、もう後戻りはできないよ。君が俺に愛を伝えるためには、心からの嫌悪を向ける他ない。俺達の関係は、既にそうなってしまったんだ。二人で、この業(ゴウ)を背負っていくしかないんだ」
「や、ちょ、待っ、」
とうとう言葉すら詰まり始めた夕梨。
どうやらそろそろ限界のようだ。ならばこちらも、最後のトドメと行こう。
自身の口を夕梨の耳元まで近付ける。吐息がかかるほどの至近距離で、とびきり甘い声色で、俺は最後の一言を口にした。
「Welcome to underground」
「きゅぅ……」
夕梨さんがログアウトしました。
というわけで、頭から蒸気を吹き出し、目をグルグルと回しながら、ついに気絶してしまった彼女の体を倒れないよう腕で支える。
恐らく、色々とキャパオーバーになってしまったのだろう。
ただでさえ酔っぱらい状態だったのに、そこに処理しきれない大量のヤバイ情報が入りこんできたのだから、当然と言えば当然。
まぁ、俺としてはそれを狙ったわけだけれども。
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