ある逆転の逆転の話

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「とにかく、本当に酷い目に合ったんですからね……」 深呼吸で一旦心を落ち着かせ、席に座りなおす。 「吉岡さんには気を使われながら拒絶されるし、紫婉には怯えながら号泣された上で通報されかけたし、静香にはガン無視というか存在そのものを否定されかけたし、夕梨に至っては別れ話を切り出された後に刃物で刺されそうになりましたからね」 「半日の効力の間にそこまで濃密な内容が繰り広げられるとは、流石の私も言葉を失いそうだ」 「というか、一歩間違えれば、都市一つ壊滅していたんですからね!俺の起死回生の逆転劇に感謝して下さいよ!」 「何がどうなったら、嫌悪からそんな事態にまで発展するのか」 清照さんが珍しく引いていた。 が、そこは流石の天下の早乙女清照。彼はすぐにコホンと咳払いをして仕切り直す。 「ともあれ、強烈な鞭を味わうことができたようだな。キラワレールが存分に仕事をしていたようで何よりだ」 「いや、なに綺麗にまとめようとしてるんですか。何一つ良いことなんてなかったですからね。俺の物語に新たなトラウマが更新されただけだったんですからね」 「"何一つ良いことはなかった"……か。っふ」 何やら含みのある笑いを漏らした、目の前の変態。 「それは当然の帰結だ、兎上駆君。なぜなら君が受けたのは、キラワレールにもたらされた強烈な嫌悪――すなわち、苦痛を伴う"鞭"でしかないからだよ」 ドヤ顔で何言ってんだこの人。 なんだろう、この男は、人をイラつかせる天才か何かなのだろうか。 駄目だ。 やっぱり我慢できない。 俺の精神衛生上、無理を通してでも一発くらいは殴っておいた方が良いのかもしれない。そうだ、そうしよう。大丈夫、鉄アレイは持ってきている。 「理解が追い付いていない顔だな。――よろしい、ならば問おう、我が友よ」 しかし俺が鈍器を取り出すよりも早く、変態は切り出した。 俺のことを真正面から見据え、全てを見透かすような澄んだ瞳で。 口元には、とびきり邪悪な笑みを浮かべて。 「――"飴"の感想は、如何だったかな?」    
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