ある逆転の逆転の話

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「……飴、ですか?」 発言の意図が理解できず、オウム返しをしてしまった俺に、清照さんはコクリと頷く。 「それとも、キラワレール効力後の環境の変化、とでも言った方が分かり易いかね?」 それを聞いて、まず真っ先に思い浮かんだのは、葵さんに無理矢理やらされた報復劇のこと。 アレはアレでかなり大変な事態ではあったが……恐らく今問われていることとは、少し違う。 あの報復劇も含めた、"キラワレール事件全体のその後"のことを、俺は今問われているのだろう。 「そう、ですね……」 改めて、記憶を辿る。 思い返すのは、キラワレール事件後のこの数日間の出来事。 「吉岡さんは、あの後、本当に食べきれない程のクッキーを大量に作ってくれて……。というか、あれから毎日お菓子を作ってプレゼントしてくれます。吉岡さんは料理上手なので非常に助かってます」 「ほほう。他には?」 「静香は、アレですね。S行為の数が激減しました。最近では、肉体的に痛めつけられることがほぼ皆無です。それどころか、定期的に撫でられるんですよね。頭を。凄く優しく。何でしょう、奴隷からペットへとランクアップしちゃったんですかね、俺?」 「ふむふむ、それで?」 「紫婉に至っては、以前にも増して甘えてくるようになりました。最近、腰に張り付いたまま離れてくれないんですよ。俺がいなくなると不安になって泣いちゃうので、ここ数日は毎夜添い寝してあげてます。めっちゃ可愛いです、俺の妹分」 「そうか、それは重畳だ」 「夕梨に関しては、正直俺も誤算でした。どうにも酒乱状態の記憶がぼんやりと残ってしまっているらしくて……こっそり俺の部屋に忍び込んではお宝本を盗み見て、日夜色々と勉強してくれているみたいです。慣れない知識を前にして、赤面しながらも、それでも懸命に俺の好みを把握しようと頑張ってくれている姿が最高に愛おしいです」 ……ん? ……あれ? 俺、何を言っているんだ? 「成程成程。君の気持ちは、よく分かった」 「ちょ、何ですか、その全てを悟ったかのような穏やかな笑みは!た、確かに、キラワレール効力後、多少は俺にとって有難い変化があったかもしれないですけれど、それとこれとは話は別ですよ!」
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