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おっと。
とはいえ、こうしちゃいられない。
この尊い光景を永遠に眺めていたい気持ちは山々だが、いつまでも、彼女一人に兎上家の家事を任せっきりにしてしまうのはよくないよな。
俺も微力ながらお手伝いをさせていただこう。
そもそも、夕梨は、余程洗濯物に夢中になっているのか……俺が帰宅して、リビングの扉からこの光景を盗み見ていることに気付いていないみたいだからな。
よしっ。まずは、気付いてもらうために声をかけて―――
「――ッ」
――と。
俺の口から彼女の名前を呼ぶ言葉が出るよりも、一瞬早く、突如夕梨の作業の手と鼻歌がピタッと止まった。
反射的に、俺もつい、言葉を止めてしまう。
一体何事か。
遠目で覗き込んでみると、夕梨は手に持った"ある物"を凝視しながら動きを止めていたのである。
その"ある物"とは……。
「俺の……Yシャツ?」
そう。彼女の手には、俺が普段学校生活で来ている制服が握られていたのである。
まぁ、そりゃあ、兎上家の洗濯物なわけですからね。俺の私物の一つや二つ、あっても何ら不思議ではない。
であれば、何をそんなに注目することがあるのか。洗い切れていない汚れでもあったのかな?
そんな疑問を抱き、首を傾げていると――俺の第六感に反応が!
なんと、突如、夕梨が物凄い勢いで周囲を確認し始めたではないか。
「ッ!」
反射的に扉の影に身を隠してしまう。
別に隠れる必要もないし、やましいこともないのだが……何だろう。つい、普段の癖で。
索敵行為には敏感になっちゃってるのよね。
「…………」
キョロキョロと念入りに周囲を見渡し、誰もいないことを確認した夕梨は、再度手にしたYシャツに向き直る。
「すー……はー……」
更に、ここで何故か大きく深呼吸。
滅茶苦茶緊張しているご様子なんだけど。
というか、顔がほんのり赤くない、大丈夫?
「……よしっ」
そして、意を決したかのように軽く頷いたかと思えば――次の瞬間。
「んっ!!」
なんと。
夕梨が俺のYシャツに、思いっきり顔を押し付けたのである。
!!???!?!??!??!?!?!!?!???!??!???!
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