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"雨の後は上天気"編_玖
会場が暗くなり、徹が出てくる。
何の仕事をしているか知らないが、堂々としたものだ。
1人でこんな大勢の前に出てくるのに、気負った様子すらない。
・・・刹那の前のほうが、よっぽど、うろたえていた(笑)
徹が一礼する。
満員の会場に拍手が一斉になる。
徹はピアノに座り、肩をほぐしてから、腕を置いた。
シーンッと静まり返る会場。静かに曲が始まる。
静けさを包むようにゆっくりと音が広がる。
生真面目そうな彼らしい、生真面目な音。
一音一音を丁寧に奏でる。
押し付けるような感情的な音ではなく、
情景がぼんやりと浮かんでくるような音。
蓮の精錬とした音とは違うが、
徹の音も彼らしくて好きだ、と思った。
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