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でもあいつは違った。
休み時間には誰とも遊ぶことなく教室の後ろの水槽ばかり眺めてた、小学校の同級生。
なんでみんなと一緒に遊ばないの、その方が面白いよ。
そいつにそう声をかけると、俺のことを八方美人だと言った。
「しまのはよくても、ほかのみんなはそうおもってないよ」
「しまのくんは八方美人なんだね」
俺の心のどっかに、そういう言動を取れば大人に褒められる、
誰からも好かれるいい奴に思われるって計算があったのかもしれない。
だって周りに集まってくる人数イコール俺の価値で、
俺は他人に認められてるって安心出来る。見返りを求めて何が悪い。
それを簡単に見抜かれたことが悔しくてたまらなくて、
卒業までずっとそいつとは話さなかった。
クラスの人間関係を良くする為に、嘘を吐いた。あいつに構うなって。
孤立しても影で何言われても何でもないという顔をして、いつも1人でいた。
その姿を見る度、自分がひどく臆病な人間だと言われているような気がして、たまらなかった。
それぞれ違う中学に進学して、それから後は誰も知らない。
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