192人が本棚に入れています
本棚に追加
/118ページ
「あー、ごめんごめん。気にしないで。俺も大人げなかった」
嶋野さんならいいんですよー、と女子社員たちは笑ったが、俺はなんだか。
なんだか、自分の悪口を言われたような気がしてた。
「まあ、あれはあれで、意外と気遣いだよ。
こっそりホチキスの針だのコピー用紙だの備品を補充してくれる、心の優しい妖怪程度に思っとけば」
笑っていつも通り振る舞って何事もなかったように仕事に戻る。
いつも通り振る舞っているフリをしているのが、自分でもよくわかって、胸が詰まる。
随分と似合わないことをしてしまった。
なんか、なんていうかさ。
見返りとかそういうの全然考えなくて、庇ったり褒めたり喜ばせたりしたい。
そういう風に思える相手って、俺にしては珍しいな。
思ってる以上に浅川のこと考えてるというか。思ってるより余裕がないというか。
これはあれだ、例の治らない病気だ。
最初のコメントを投稿しよう!