192人が本棚に入れています
本棚に追加
/118ページ
嶋野はほうれん草の入ったカルボナーラと温野菜のサラダを作ってくれた。
この部屋で食べたものの中では、一番ちゃんとした料理のような気がする。
「今日は準備不足で簡単なものしか作れなかったけど」
「いえ、充分です。料理出来るとか本当、すげえなって思いますし。カルボナーラって家で手作り出来るもんなんですね……」
「出来るよー。俺、学生の時バイトで厨房やってたからさ。結構色々作れるよ。浅川は料理しないの?」
「ああ……俺はそういうのは、全然」
「人と一緒に御飯食べるとうまいよね」
あの台風が頭の中にまたやってくる。ざわざわと耳の奥に音を立てる。
他の誰かが自分の心に入ってきて、駆り立てる。
自分だけで充分なのに。
自分のことだけでいっぱいで、他人を頭の中に住まわせる余裕なんてないのに。
最初のコメントを投稿しよう!