#03

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「あー、それ知ってる。俺、映画で観たことある」 会社の隣の席から嶋野の笑い声が聞こえてくる。 その映画、俺と観たやつじゃん。 足下でにゃあにゃあ鳴いてた子猫が、 自分以外の人間に懐いたって不自然なことじゃない。 でも、なんでかな。ちょっといらっとする。 「浅川、おまえ何にする?」 「……はい?」 パソコンのディスプレイから顔を上げると、 嶋野がもみじ饅頭のカラフルな箱を持って立っていた。 「高坂さんの実家が広島で、もみじ饅頭買ってきてくれたんだよ。抹茶とカスタードとチョコとー」 「残ったやつでいいです……」 「じゃあ、つぶあんにしとけ」 ひょいとつぶあんのもみじ饅頭を手渡された。
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