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「あー、それ知ってる。俺、映画で観たことある」
会社の隣の席から嶋野の笑い声が聞こえてくる。
その映画、俺と観たやつじゃん。
足下でにゃあにゃあ鳴いてた子猫が、
自分以外の人間に懐いたって不自然なことじゃない。
でも、なんでかな。ちょっといらっとする。
「浅川、おまえ何にする?」
「……はい?」
パソコンのディスプレイから顔を上げると、
嶋野がもみじ饅頭のカラフルな箱を持って立っていた。
「高坂さんの実家が広島で、もみじ饅頭買ってきてくれたんだよ。抹茶とカスタードとチョコとー」
「残ったやつでいいです……」
「じゃあ、つぶあんにしとけ」
ひょいとつぶあんのもみじ饅頭を手渡された。
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