#03

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「浅川、この前さあ、俺になんでうち来るのって訊いたよね」 ぽろぽろと崩れたスコーンのかけらが紙袋の上で小さな音を立てる。 「1人で食べるのが嫌だとか、人と食べるのが好きだとか、料理したいとか、そういうのも勿論あるけどさ。浅川と一緒にいると楽しいからに決まってんじゃん」 チョコレートの甘い匂いとコーヒーの匂いが混ざる。 「浅川は俺と一緒にいて楽しくない?」 「……考えたこともなかった」 「え!? ひどくね?」 「……嶋野が俺と一緒にいるのは、誰かと一緒にいるのが目的で、俺はその手段に過ぎないんじゃないかって。俺が目的な訳じゃなくて、それは俺じゃなくても、別に用は足りるだろうと思って」 俺がそう言うと嶋野は、 ちょっと言ってることがよくわかんねえな、 と頬杖をついて片手で俺をじっと見るので、思わず目を逸らした。
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