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「えっと、噛み砕いて言うと、目的と手段というのは……」
「そうじゃなくてさ。……誰でもいいんじゃなくて、浅川がいいの。そりゃ誰かと一緒にいたいなって思う時はいっぱいあるよ。TPOによって色んな誰かと一緒にいるけど、でも最優先はお前なの。わかった?」
わからない。わからないので口ごもっていると、怪訝そうに俺の顔を覗き込んできた。
「……そんな価値が自分にあるとは思えない」
「いいとこいっぱいあんじゃん、おまえ。人のこと笑ったりしないし。ちょっといつもと違うことしたくらいで、キャラが違うとかどうのこうの言ってこないし。ブラックコーヒー飲めなくても馬鹿にしないし」
「人間の性質というものは単一ではなくて、多様な性質を併せ持っているものだから……」
「なんだそりゃ。あと判子押す時、いつもまっすぐに押せるのな。曲がったり横向いたり絶対しないの凄いな。それから箸の持ち方きれいだよな。他にもいっぱいあるぞ、浅川のいいとこ。俺しか知らないけど」
「……別にいい」
「え? いいの?」
「うん。嶋野がわかってくれてんなら、それでいい」
俺の言葉に嶋野は猫みたいににんまりと笑って、一息ついてから言った。
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