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そうだこれ、と嶋野は紙袋の中から薄いボール紙で出来た箱を2つ取り出した。
開けるとそれぞれ中には色違いのマグカップが入っている。
「この部屋、俺専用のカップないからさ。いつまでも来客用のカップ使うのもなんか……つかさ、俺もう客じゃないだろ」
「ないね。お客様って態度じゃない。もう1こは?」
「……空気読めよ。黄緑と水色、どっちがいい?」
「……黄緑、かな」
「あと、布団も注文したから。その内届くから」
「俺、時々お前のことを殴りたくなる時あるよ……」
部屋の中に嶋野のものが増えていく。
まるでここは俺の場所だとナワバリをはるかのように。
たぶん嶋野がいない時でも、マグカップを見れば嶋野のことを感じられるだろう。
新しい感情が、自分の中にどんどん増えていく。
新しい色が胸の内を染めて、その内全てが変わっていくのかもしれない。
でもそれはきっと悪いことじゃなくて、なんだかわくわくするようなことだ。
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