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本当に伝えたい大事なことってどうして言葉にすると薄っぺらくなるんだろう。
自分の言葉では充分に伝わってないような気がして、もどかしい。
「本当にそう思ってるから」
「うん、わかってる。浅川が適当なこと言う訳ないもんな」
ぽんぽんと頭を撫でる、俺よりも大きな手のひら。
他人には見せない本当のことを、俺だけに見せてくれた。
こんな人にはもう一生出会えないかもしれない。
こんなにも自分が誰かに愛されていると実感したのは、生まれて初めてだ。
俺も、嶋野だけは信用出来る。その言葉を言いかけて呑んで。
「……あのさ、もし嶋野が1人暮らししたら、たまに嶋野の部屋に行っていい?」
「当たり前だろう。たまにじゃなくて毎日来ていいよ。服でも本でもなんでも置いていいよ」
嶋野の靴に白猫があごをすり寄せると、嶋野はそうっと背中の毛を撫でた。
俺にそうするみたいに。
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