第1章

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でも、 麻斗を信じるのは怖い。 この矛盾が、 ひばりの中でぶつかり合う。 だけど。 麻斗の告白を聞いて、 ひばりは素直に嬉しかった。 思い返してみれば、 昨夜の行為中も、 麻斗はひばりを大切に扱ってくれた。 その理由は、 勘違いなんかではなかったのだ。 ひばり自身を想ってのこと。 それで、 それだけで、 もう充分じゃないか。 麻斗の優しさ、 麻斗の気持ちは、 痛いほどにひばりに伝わっている。 信じるには、 もう充分すぎるものをもらっていた。 ひばりは、 麻斗が好きだ。 そして、 麻斗もひばりを好きだと言ってくれている。 「……麻斗さん、 お願いがあります」 「何だ?」 「おれの名前、 呼んでください」 首をかしげる麻斗に、 ひばりは何も言わず、 ただ見つめる。
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