第1章

17/145
前へ
/145ページ
次へ
しかし、 ひばりは立ち上がるにも立ち上がれない理由があった。 右肩にかかっている人の重みに、 僅かに身じろぐ。 それに合わせるように、 右隣から微かなうめき声が。 その声にびくりと身体が跳ね、 ひばりの手にしたグラスの中の液体が大きく揺れた。 ひばりは、 ちらりと右隣りで項垂れている男、 麻斗を見た。 少し長めの茶色い髪が、 顔を覆うようにしているので、 彼の表情は見えない。 男の中では小柄なひばりとは違い、 麻斗は羨ましいぐらいに身長が高く男らしい。 そんな麻斗が、 ぐったりとした様子でソファーに項垂れている姿は、 まるで大きな犬がご主人様に見捨てられたように見えて、 見るに堪えない。 その原因は明らかに過度の飲酒が原因で、 今の彼は意識も半分、 夢の世界に半身を浸しているような状況だった。
/145ページ

最初のコメントを投稿しよう!

76人が本棚に入れています
本棚に追加