第1章

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その原因は、 きっと、 彼女の名前がひばりと同じだったことだろう。 麻斗が、 愛しそうに彼女の名を口にするたび、 ひばりは泣きそうになった。 そんな声で、 その名前を呼ばないでくれと、 何度言いだしそうになったことか。 まるで自分の名前を呼ばれているような、 そんな錯覚。 彼の呼びかけに返事をしそうになり、 でも返事をするのはひばり自身ではなく、 同じ名前の可愛らしい彼女で。 何故、 彼の隣で笑っているのは自分ではないのだろうか。 何故、 彼に愛おしい声音で呼ばれているのが、 自分ではないのだろうか。
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