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麻斗が、
声をかけてきてくれたのだ。
『迷子?どこに行きたいだ?』
『え、
あ、
はい……──っ!?』
親切なその声に安堵して振り返ると、
にっこりと優しげな笑みを浮かべた麻斗が立っていた。
春風に揺れる少し長い茶色い髪、
見ているだけで人を癒すような優しげな笑み。
あの時、
あの瞬間の衝撃は、
一生忘れない。
ひばりはその瞬間、
麻斗に一目惚れした。
一目惚れなんて初めてのことで、
そんなものが実際に起こるなんて思ってもいなかった。
ただぼーっと麻斗の顔を見ていると、
麻斗に額をぺちんと叩かれた。
『何ぼーっとしてんの』
『す、
すいません!つい、
……格好いいなぁってっ』
『は?──あははっ、
お前、
変わってんなぁ』
『うっ、
……良く言われます』
『だろうなぁ。
──って、
それより、
行きたいところあるんだろ?俺、
暇だしどこでも案内してやるよ』
『えっ、
あのっ、
でもっ』
格好良くて、
背もある。
しかも、
道に迷っている人間に声をかける優しさを持ち合わせているなんて、
麻斗は完璧だと思った。
高校の頃から小柄で、
女の子の様だとちゃかされていたひばりにとって、
麻斗はまさになりたい男性そのものだったのだ。
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