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「……はい、誰も呼びません。だから、安心してお休み下さい」
優しく微笑みかけると、苦しそうだったロゼ様のお顔が僅かに安堵で和らいだ。ありがとうと呟かれると、ロゼ様の瞼が閉じる。
余程ジルフォード殿下のことが気がかりだったのだろう。暫しして、僅かにだが寝息も聞こえてきて私は安堵する。
だがやはり心配だ。ロゼ様はいつもの発作だとおっしゃられたが医師に見せないことには安心はできない。
「……だが、私にはわかります」
貴方が兄であるジルフォード殿下に心配をかけたくないという気持ちが。私が同じ立場でも同じ選択をする。
大切であれば大切であるほど、そして自分を思って胸を痛めてくれる人だと知っていれば尚のこと心配をかけたくない。ロゼ様もそうなのだろう。
……エジェドの第一王女は身体が弱く、その生を城の中で過ごしており自国の者ですらその姿を目にしたものはごく僅かという話を聞いてはいたが、実際に目にしていかに容体が芳しくないかがわかる。
「……行かないで」
聞こえてきた小さな声にもしや起きていたのかと思ったが、そうではないようだ。
苦し気に寄せられた眉に、幼い少女が目の前で苦しんでいるというのにどうしてやることもできない罪悪感に胸が痛む。
……このような状態では夜の宴にロゼ様は参加されないだろう。
私は参加は避けられない。私は宴の一番の見世物だ。エジェドがロフィリアスに勝利した証として晒される。
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