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ゾンビは、廊下にいる俺達を視界にとらえた。
「…本当に、母さんが俺を守りたいが為に死んだのなら…兄貴!ペンキ缶貸して!」缶の一部が開き、中が固まってしまっている。そして、開いた部分がカミソリ状になっている。
兄弟どちらもキャッチボールなどはよくやっていたので、投球のフォームは完璧にできる。
ゾンビはもう、近くまで迫った。
3…2…1……0。
唸りを上げて、腕を振る。普通に比べるとやや小柄なペンキ缶だ。しかし、中には固形のろうが詰まっている。相当重く、投球中には、脱臼するかと思うほどの強さで遠心力がかかった。
振り回すように投げた缶は、回転の軸線上に刃を突き出し、エネルギーを持ったまま、6mほど先にいたゾンビに刺さった。ゾンビの首筋あたりから、赤い血が吹き出す。
「まあいいや…後で、あの世ででも聞こう。」
俺は、倒れたゾンビを見ながらそう言った。
「死なないようにしろよ。」
「大丈夫。寿命で死ぬよ。だから、その時までは生きる。」
そう言えば、もうそろそろ聞けるのだろうか?ちゃんとした答えを、あの世で。
筆を持つ右手を見た。皮膚は褐色になっていた。震えが目立つ。もうすぐだが、後少しだけ生きてこの小説を終えよう。
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