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この警官たちは、派遣はされたものの、ゾンビに対抗する手段が分からずに殺されたのだろう。首が、防弾チョッキごと食いちぎられていた。あらぬ方向に向いていたので、骨が繋がっていないことが明らかだった。
幾らかこういうのの知識は持ち合わせている。腹部のマガジンポーチから、予備のマガジンを4本取った。
「グルルル…」
「?!」
俺は、唸り声を聞いた。SIGにマガジンを押し込んでスライドを少し引いた。スプリングの力で初弾が装填される。そして、ヴィーバースタンス…のような体制をとった。
「どこから…?」
「グルルルルル…」
今度は、さっきより近くから唸り声が聞こえた。校舎の隅あたり…しかも、かすかながら重複している。人間ではない。あんな唸り声は、狂っていても出ないだろう。
「…犬?」
角から出てきたシルエットは、警察犬などとして多用されるドーベルマンだった。もちろん、内臓を垂らして吠えるドーベルマンなど、この世には存在しない。ゾンビ犬と言ったら良いのか…
先頭の犬が遠吠えをした。途端に、後続の犬たちが、一斉に目を向けた。
「な、なんだっていうんだ…人間だけが狂ってるんじゃないのかよ?!」
ヴィーバースタンスは崩さなかったが、リアサイトとフロントサイトの位置が定まらない。手が震えてきたのだ。彼らは俊敏性を失ってない。今は校庭の真ん中にいるが、全速力で走っても追いつかれそうだ。
「く、くそ…」
俺は、自分の運動オンチを呪った。
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