別れの5、集いの6

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「大丈夫?」 震えていた彼女の肩をつかみ、話しかけた。 「あ…あ…」 彼女はゾンビの危機が去ったのを知ってか知らずか、まだ怯えていた。しばらく焦点が決まらないままだったが、 「…は…私は…大丈夫…あの、失礼ですが、誰ですか?」 数秒経つと、さすがに正気が戻ってきたようで、話しかけてきた。 「同じクラスの直次。どうしてこんなところに?」俺は煙を吸うのを抑えるために巻いた手ぬぐいをほどいた。 「手拭いを巻いてたからわからなかったんです。すいません。」 「いいよいいよ。」 「は、はい…一旦クラスのみんながバラバラになった後、学校に一番近い私の家に何人かが集まりました。他にも生き残りがいると思って、探索に行くことになったのですが、逃げているうちにはぐれてしまったんです…それで、ここが行き止まりになってて…」なるほど、後ろの道は火がついたガレキで塞がれている。 「誰が集まっているの?」 「中井君と大原君、花園さんと私。誰か居なくなったら一旦家に集まるようにしてるから、多分みんな帰ってきてると思うわ。」 「そうか。…もう心配しなくてもいい。」夜子の手を、俺は優しくにぎった。彼女は微笑を返し、立ち上がって膝の砂をはたいた。 「その家に一旦避難しよう。武器はこれだけだし。」 SIGを見せた。確かに、と夜子は頷く。 「奴らに対処できるものを探すことからだ。」 「大丈夫なの?」夜子が聞いた。 「うん。きっと脱出できるよ。」 そう返してから、SIGをマグチェンジした。 「夜子さん、案内してくれ。僕が守る。」 「あら、頼もしいのね。」 「な、なんだって?!」 夜子はクスクスと笑った。 でも、これだけならば行動に支障は出まい。俺は内心で安心していた。 「直次じゃねえか!」夜子の家に着き、居間の中に入ると、柔道部でクラスメートの頼人がこっちに寄ってきた。 「よかった。やられちゃったらどうしようかと思ってたんだ。」横から来た軽仁も、ほっと胸をなで下ろしていた。。 「でも、兄貴は…」 「え?直兄さんがどうしたって?」 「ううん、何でもない。」俺は薄ら笑いで返した。
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