5人が本棚に入れています
本棚に追加
/42ページ
これで注油は済んだ。細かく言うと、銃身、薬室以外は油をさし、銃身は眼鏡フキの端をちぎった物を薬室から鉛筆で押して、銃身の汚れを落とした。ティッシュでは傷が付くそうだ。
SIGのスプリングが、抑えが足らずに跳んだ。
「あっ!」
「ドジだなあ。ここを抑えりゃいいだろうが。」
頼人が突っ込み、軽仁が笑った。俺も、いつの間にか笑みを漏らしていたのに気づいた。
「頼人君たち?」上から降りてきた花園が声をかけた。
「エマージェンシーブランケットが防災袋に何枚かあったわ。毛布の代わりに使って。」
エマージェンシーブランケットは薄い銀色のシートで、毛布の一時的な代用品となる。使い捨てで、毛布数枚分の断熱効果があるそうだ。
「ありがとう。」油差しも終わって、スライドを数回すり合わせた。ストッパーを元に戻しながら、俺は畳まれたブランケットを受け取った。
「じゃ、おやすみなさい。明日は6時から出発ね。」
彼女が戻って行ってから、3人はそれぞれのシートを被った。
「…寒くなってきたな。寝るか。」
「そうだね…ふぁぁぁ…。」
「武器は他にないの?」俺は軽仁に聞いた。軽仁の両親が経営している猟銃店には、確か他にも銃があった気がするが…
「うん。展示してたこの銃だけ。あとは鍵がかかってる銃器庫にあるから。」
「そうか…ありがとうな。じゃあ明日、脱出しよう。」
「うん。頑張ろう。」
「おやすみ。」
「おやすみ。」
短い挨拶を交わしたあと、俺たちはブランケットを被って、電気を消した。
最初のコメントを投稿しよう!