平凡な1

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下級生は午前中で帰り、3階にある3年2組の教室だけに明かりが灯っていた。しかし、それらのクラスも今は終会中だ。今日、中学生最後の2学期が終わろうとしている。 「…って、なんで俺たち6時間あるんだ?」 「仕方ないよ、1日全員無断欠席したんだから。」 秋のこと、インフルに5、6人かかっていると2組の間で噂が立ち、学級閉鎖を勝手におこしてしまったのだ。(もちろん嘘、であったらしい)冬休みが伸びることを猛反対した挙句、最後の日にこの学級だけ6時間目まで授業をすることとなったのだ。 これはまた、昼休みの直次と隣の女子の話。 生徒会長兼委員長の女子が終会を進める。 「明日の時間割については以上です。では、係の人で何か連絡があれば、手を挙げてください。」 「…ぐう」直次は船を漕ぎかけている。今日も朝早く起きたが、その分寝不足になってしまっているようだ。本末転倒としか言えないが、昔の彼にとっては早起きだけでもできて嬉しいのだろうか。 2つ3つ程度、ぽつぽつと連絡があったあと、委員長は担任が来るまで読書するように言った。 無駄に長いな…先生らの話し合い。数分前に起きた直次は、本を机から取り出しながら思った。 その時突然、引き戸が乱暴に開いた。入ってきたのは担任だ。あまりにも大きな音に、クラスメートの何人かは何かを感じ取ったらしく、一旦は静まった教室はまたざわめきを表に表した。 「直次君!」 「えっ?」彼は名指しされ、まだ少し虚ろ気味だった目を見開いた。 「ちょっと廊下に。」 歩いてきた直次に、担任は衝撃の発言をした。 「君のお母さんが突然倒れてしまったと連絡がありました。お兄さんが救急車を呼んでいます。早く行ってあげなさい!」 直次は一瞬固まっていたが、担任が肩を揺すると、急いで教室に戻った。ロッカーの荷物を急いでカバンに詰めた。 「ど、どうしたの?」隣の女子が、ロッカーから荷物をカバンに放り込んでいる背中に声をかけた。 「また後でいうよ、それじゃあ、ありがとうございます!さようなら!」すでに入ってきていた担任にそう言って、走って教室を出た。
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