第1章

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子供には罪はない。母親から言われて、ただ捨てに来るだけだからだ。 だが、今日の母親には我慢できなかった。 四歳くらいの女の子が〔何度も〕店の中に置いてあるゴミ箱に捨てに来た。 女の子は駐車場に停車している車からゴミ袋を渡されているようだった。 図々しいにもほどがある。 私は女の子に声をかけた。 「お嬢ちゃん、ここはね、お家のゴミは捨てちゃダメなんだよ」 急に声をかけられた女の子は一瞬、ビクッと身体を震わせた。 「ママに言われたのかな」 女の子は何も答えず頷いた。 「ママにここに捨てちゃダメって言ってくれるかな」 女の子は俯いたまま、何も答えなかった。 「お嬢ちゃん、おじさんの言ったことが、わかったかな」 しかし、女の子は私を無視してゴミ箱に捨てた。 私はしゃがみこんで、もう一度言った。 「おじさんの言ったことが分からなかったかな?」 すると女の子は強い口調でこう答えた。 「だって、ママがパパを捨ててこいって」
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